2021.02.16
喫煙所コラム
加熱式・電子タバコの副流煙は無害?健康増進法の対象になる?
近年、使用者が増えているのが「加熱式・電子たばこ」です。
皆さんも周りにも、紙巻きたばこから加熱式たばこや電子たばこに移行したという人も多いでしょう。
加熱式・電子たばこは、副流煙が出ないということから、注目している人もいると思います。
今回のコラムでは、「加熱式・電子たばこにも受動喫煙のリスクはあるのか?」について見ていきましょう。
たばこの種類とその特徴
加熱式たばこの受動喫煙のリスクについて解説する前に、「たばこの種類」について解説します。
一口にたばこといっても、いくつかの種類があり、特徴も異なるのです。
簡単にどのようなものであるか、どのような特徴があるのか、について解説します。
紙巻たばこ
「たばこ」と聞いた際に、おそらく最も多くの人がイメージするたばこです。
細かく刻まれた、たばこ葉を紙で巻いて包んだもので、包まれているたばこ葉を燃焼させて使用するたばこ。
葉巻
乾燥あるいは加工した、たばこ葉を巻いたもので、さまざまな太さや長さのものがあります。
加熱式たばこ
紙巻きたばこなどと同じように、たばこ葉を使用しているものの、たばこ葉を燃焼させるのではなく、加熱して蒸気を発生させるというたばこです。
電子たばこ
電子たばこは、紙巻たばこや加熱式たばことは異なります。
たばこ葉を使用せず、溶液を電気加熱することで発生する蒸気を吸引するというたばこです。
加熱式たばこと電子タバコの副流煙に害はあるの?
簡単に、それぞれのたばこの特徴について解説しました。
近年では、紙巻きたばこよりも、加熱式たばこや電子たばこを使用する人が増えていますが、副流煙による害はあるのでしょうか?
副流煙とは、たばこから立ち上る煙のことですが、加熱式たばこは煙がほとんど出ないため、副流煙は発生しないとされています。
そのため、加熱式たばこは安全と思ってしまう人が多いようですが、呼出煙には有害物質が含まれていると言われているのです。
呼出煙とは、喫煙者が吸って吐き出した、煙のこと。
このことから、副流煙による害はないものの、呼出煙等によって、周囲の人の健康に害を及ぼす可能性があると言えます。
また、電子たばこについてですが、たばこ葉を使用していないので、副流煙による害はないと言えるでしょう。
ただし、副流煙が出ないからと言っても、安全とは言えません。
電子たばこについては、歴史が浅く、不明な点も多いですが、令和元年に厚生労働省が「電子たばこの注意喚起について」という注意喚起を行っています。
注意喚起の内容について簡単に解説すると、海外では電子たばこの影響と考えられる、健康被害症例が報告されているとのこと。
原因の調査などを行っているため、関連性については不明な部分もありますが、現在でも厚生労働省では、電子たばこ使用に関する健康影響についての情報収集を行っているそうです。
加熱式たばこによる受動喫煙は増加している
加熱式たばこは、副流煙が出ないため、紙巻きたばこと比較すると受動喫煙のリスクも小さいと考えていませんか?
ですが、実際には加熱式たばこによる受動喫煙は増加していると言われています。
東北大学の研究によると、加熱式たばこによる受動喫煙への曝露が急激に増加しているそうです。
この研究は、一般住民における加熱式たばこによる受動喫煙への曝露状況の実態について調べた研究となっています。
その研究によると、次のような結果が出たそうです。
【加熱式たばこによる受動喫煙への曝露割合(%)】
・2017年 男性5.6% 女性3.6% 合計4.5%
・2018年 男性8.9% 女性7.2% 合計8.0%
・2019年 男性12.2% 女性5.9% 合計9.2%
・2020年 男性12.1% 女性9.4% 合計10.8%
【教育歴ごとの加熱式たばこによる受動喫煙への曝露割合(%)】
・2017年 中学/高校卒5.4% 専門学校/短大/高専卒3.8% 大学/大学院卒3.8% 合計4.5%
・2018年 中学/高校卒10.2% 専門学校/短大/高専卒6.9% 大学/大学院卒5.5% 合計8.0%
・2019年 中学/高校卒11.0% 専門学校/短大/高専卒8.9% 大学/大学院卒6.9% 合計11.0%
・2020年 中学/高校卒12.3% 専門学校/短大/高専卒10.7% 大学/大学院卒8.7% 合計10.8%
【加熱式たばこによる受動喫煙への曝露リスク】
・中学/高校卒1.57
・専門学校/短大/高専卒1.34
・大学/大学院卒1.00 大学/大学院卒」を基準として相対危険度を数値化
(出典:東北大学 加熱式たばこによる受動喫煙への曝露が急激に増加)
調査結果では、加熱式たばこによる受動喫煙への曝露は急速に増加しており、その割合は約2.5倍となっているそうです。(2017年4.5% 2020年10.8%)
さらに、2020年には約10%の人がほぼ毎日曝露されていたことがわかったとあります。
また、教育歴が低ければ低いほど、曝露リスクが高いことも判明。
受動喫煙と聞くと、紙巻きたばこによるものを想像する人が多いと思いますが、これからは、加熱式たばこによる受動喫煙のリスクにも注意しなければなりません。
加熱式たばこの使用率と身体への影響
さきほどは、加熱式たばこによる受動喫煙が増加していると解説しました。
次に、知っておきたいのが加熱式たばこの使用率と身体への影響についてです。
厚生労働科学研究費補助金((循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)特別研究報告書、「加熱式たばこ使用者を対象としたインターネット調査(定量調査)」によると、加熱式たばこの使用者の割合について、次のような結果が出たそうです。
・加熱式たばこ使用者は全体の8.6%
【全体に占める加熱式たばこの使用者の割合】
・20~59歳の男性計12.7%
・20~59歳の女性計4.4%
・30~39歳の男性15.7%
・20~29歳の男性13.9%
・40~49歳の男性12.1%
・20~29歳の女性5.3%
【喫煙者に占める加熱式たばこ使用者の割合】
・全体38.5%
・男性40.9%
・女性32.7%
・20~29歳の男性53.8%
(出典:厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)
特別研究報告書 加熱式たばこ使用者を対象としたインターネット調査(定量調査))
調査結果では、男性も女性も年齢が若い層が加熱式たばこを使用する割合が高いことがわかっています。
加熱式たばこの使用率について解説しましたが、身体への影響はどのようなものなのでしょうか?
一般的なたばこの煙には、5,300種類以上の化学物質が含まれていて、さらにそのうちの70種類以上が発がん物質であると言われています。
イメージとしては、紙巻きたばこよりも、加熱式たばこの方が、有害物質は少ないというイメージを持っている人が多いでしょう。
実際に、加熱式タバコの広告や宣伝では、「有害物質○○%オフ」や「発がん性物質を○割カット」などと謳うものもあるようです。
ですが、仮に紙巻きたばこよりも削減されていたとしても、たばこには安全なレベルというものがないと言われおり、喫煙者はもちろんですが、周囲の人の健康に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。
(参考:喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書)
改正健康増進法の対象になるのか?
日本では、喫煙に関する法律として、「改正健康増進法」があります。
紙巻きたばこについては、この法律の対象になるということを多くの人が知っていると思いますが、近年主流になりつつある、「加熱式たばこ」や「電子たばこ」も対象になるのかが気になるところでしょう。
加熱式たばこ
加熱式たばこについては、紙巻きたばこと同様に、改正健康増進法の対象となります。
そのため、第一種施設や第二種施設などでは、それぞれのルールに基づいて対応する必要があるのです。
電子たばこ
電子たばこについては、紙巻きたばこや加熱式たばことは大きく異なります。
電子たばこについては、規制の対象外です。
ただし、施設のルールとして、紙巻きたばこや加熱式たばこと同様に、喫煙禁止場所での使用を禁止することなどは可能であるとされています。
電子たばこについては、改正健康増進法の対象外となるのですが、非喫煙者からのクレームやトラブルなどに発展する可能性があるため、公共の場所や施設によっては、紙巻きたばこや加熱式たばこと同様に、喫煙所での使用を求めているところもあります。
蒸気が出るため、非喫煙者からすると煙が出ているように見えて、クレームやトラブルに発展することがあるのです。
ですから、法律上では規制の対象外となっていても、それぞれの施設のルールをしっかりと確認したうえで、使用するのが適切と言えるでしょう。
必要な分煙対策は?
加熱式たばこについては、紙巻きたばこと同様に、受動喫煙のリスクがあることや改正健康増進法の対象となっていることを解説しました。
そのため、しっかりとした分煙対策が必要となります。
具体的な分煙対策としては、空間分煙です。
喫煙が可能な場所を決めて、それ以外の場所を禁煙にするというものです。
「受動喫煙のリスクがあるのなら、全面禁煙とした方がよいのではないか?」という声もあるでしょうが、多くの場所では喫煙者と非喫煙者が混在しているのが一般的です。
一般的なオフィスや商業施設などでは、とくに混在している状況をよく見かけます。
空間分煙を行うことで、喫煙者と非喫煙者の共存を可能にすることができるのです。
そのため、空間分煙を行うのがよいでしょう。
空間分煙を行うには、施設の種類に応じてルールを確認すること、喫煙所を設置する際には、法律に基づいたものを設置することが大きなポイントとなります。
空間分煙と言っても、自由に喫煙所を設置できるわけではありません。
学校や病院などの第一種施設では、原則敷地内禁煙となっており、喫煙をするためには、特定屋外喫煙場所の設置が必要となります。
屋内については完全禁煙となっているので注意が必要です。
一般的なオフィスなどが分類されている、第二種施設では、原則屋内禁煙がルールとなっています。
ただし、一定の技術的基準を満たすことで、喫煙専用室などを屋内に設置することが可能です。
また、第二種施設の屋外については、規制の対象外となっています。
喫煙所などを設置する場合には、法律に基づいたものを設置するのはもちろんですが、たばこの煙やニオイが漏れないようにすることも重要となります。
煙やニオイが漏れ出すと、クレームやトラブルになりますので注意が必要です。
そのような状況を放置していると、訴訟を起こされてしまうリスクもあるでしょう。
第二種施設については、屋外は規制の対象外となっていますが、自由に喫煙をしてもよいということではありません。
隣接する施設などがあれば、風でたばこの煙やニオイが届く場合がありますので注意しておきましょう。
企業の担当者は適切な分煙対策を
一般的な企業では、喫煙者と非喫煙者が混在しています。
また、喫煙者の中にも、紙巻きたばこを使用している人もいれば、加熱式たばこや電子たばこを使用している人もいますので、適切な分煙対策を行うことが大切です。
とくに、注意しておきたいのがそれぞれにリスクがあるということ。
紙巻きたばこや加熱式たばこには、受動喫煙のリスクがありますし、電子たばこについてもけして安全性が高いものとは言えません。
実際に、最初の方で紹介しましたが厚生労働省が電子たばこについての注意喚起を行っています。
喫煙者の中には、電子たばこであれば安全と考えてしまっている人もいるでしょう。
さらに、加熱式たばこなら、紙巻きたばこよりも安全と考えてしまう人もいるはずです。
そのような状況を放置してしまうと、大きな問題となってしまうので、企業内においてしっかりと喫煙に関するルールを明確にしておくとよいでしょう。
トラブルを未然に防ぐという意味でも、紙巻きたばこや加熱式たばこはもちろんですが、電子たばこについても、喫煙所での使用を推奨するなどの対策が必要となります。
喫煙者と非喫煙者の共存を可能にするためにも、適切な分煙対策を行いましょう。
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まとめ
一般的なイメージでは、加熱式たばこの受動喫煙リスクは小さいと考える人が多いと思いますが、実際には加熱式たばこにも受動喫煙のリスクがあります。
とくに、以前よりも加熱式たばこの使用者が増加しており、加熱式たばこにおける受動喫煙のリスクが高まっていると言われているのです。
そのため、企業の担当者や施設の管理者などは、法律を正しく理解して、適切な分煙対策を行うことが大切となります。
喫煙者と非喫煙者の共存を可能にするためには、非常に重要です。